Summary
映画『オッペンハイマー』は、1940年代のマンハッタン計画を背景に、J・ロバート・オッペンハイマーの生涯を描いた伝記映画です。オッペンハイマーは、優秀な科学者たちを率いて世界初の原子爆弾を開発することに成功しますが、その後原爆の使用による多くの命が失われたことを知り、深い苦悩に陥ります。
- 出演 キリアン・マーフィー、ロバート・ダウニー・Jr.、エミリー・ブラント
- 独自の映像技術: IMAXカメラと65ミリカメラを用いた高解像度の撮影が特徴です。
- 第96回アカデミー賞で最多7部門を受賞しました。
- 第81回ゴールデングローブ賞でも最多5部門を受賞しました。
Review
作中、オッペンハイマーが音楽と物理学を例える表現が登場します。この表現は、音楽の構築要素と物理学の法則が同じように、創造性や調和を求める過程において共通点があることを示しています。
具体的には、音楽がメロディー、ハーモニー、リズムといった要素から成り立つように、物理学も基本的な法則や理論が組み合わさって複雑な現象を説明します。この比喩は、科学と芸術の境界が曖昧であり、両者が人間の理解を深める手段であることを強調しています。
オッペンハイマー自身が音楽を愛していたことから、彼の科学的探求が音楽的感性に根ざしていることを示唆しており、科学者としての彼の能力が創造的な思考によっても支えられていることを表現しています。このように、音楽と物理学の融合を通じて、映画は科学の美しさやその背後にある人間性を探求しています。
本作品では、1954年に、ソ連のスパイ容疑を受けたオッペンハイマーが、秘密聴聞会で追及を受けるシークエンス(作中はカラー映像)、と1959年にストローズの商務長官任命の諮問公聴会でオッペンハイマーに対する質問が繰り返されるシークエンス(作中は白黒)とが交互に描かれています。この演出はこの作品を複雑化しているとも感じましたが、白黒の世界では、エゴや、地位、名誉、権力、政治の世界を描き、カラフルな世界では、音楽、宇宙、創造、人間性を描いているように感じました。
量子物理学の世界では、人間は宇宙の光の一部に過ぎず、そしてその人間の真理は芸術だと思ったのでした。
